バーチャルリアリティ(VR)を自社のビジネスに活用するための知っておきたい良好事例5選
近年、特にバーチャルリアリティ(VR)について耳にする機会が増えてきました。
2016年は、スマートフォンに装着して使うことのできるVR体験用のヘッドマウントディスプレイ(GearVR)、そしてPlayStation4(PS4)と接続できる仮想現実ヘッドセットPlayStation VR (PSVR)が登場するなど、「VR普及元年」とも言われています。
VRと言うと、主にゲームの分野への活用というイメージでしたが、ビジネスへの活用も盛んになりつつあり、徐々に広まってきています。
・facebookのCEOマーク・ザッカーバーグ氏がVR企業を20億ドルで買収
・GoogleがAR(拡張現実技術)企業に多額の出資
とのニュースが話題になり、VR技術が持つ可能性が注目されています。
今後、ますますVR関連市場は拡大していくものと予想されます。
VRには興味があるが、自身のビジネスにどう活用していけばよいのか?
正直なところ、VR技術については、まだまだリアリティの点での課題や導入による費用対効果の不透明感などがあります。
しかし、今すぐVRをあなたのビジネスに導入する、しないに関わらず、いつでもVRを導入してビジネスチャンスにつなげられるように準備しておくことは大切だと考えます。
ここでは、VRと相性のよいビジネス事例をご紹介します。
この記事をきっかけにVRのビジネスへの活用についてさらに関心をもっていただき、なんらかのヒントになれば幸いです。
今なぜバーチャルリアリティ(VR)なのか?
バーチャルリアリティの歴史は、1962年に、映像技師のMorton HeiligがSensoramaというVR体験装置の試作機を開発したところから始まりました。
その後、1968年に、ユタ大学のアイバン・サザランド によってヘッドマウントディスプレイ(HMD:頭部搭載型ディスプレイ)が開発されたものが最初のウェアラブル型VR装置であるとされています。
「バーチャルリアリティ」という言葉は、ジャロン・ラニアーが設立したVPL Researchが1989年に発表したVR製品の紹介から一般的に使われ始めました。
この年がVR元年と言われています。
(以上、「Wikipedia」参照)
その後、流行と停滞を繰り返すことになります。
その主な理由の1つとして、画像の表示画素が粗く、トラッキング(動きを感知し追跡する機能)の精度が不十分でコンピュータの処理能力が限られていた事などが挙げられます。
しかし、2016年に入ると、本格的なVRゲームを手軽に楽しめる場としてのアミューズメント施設ができ、冒頭で述べたように手軽にスマホに装着して使うことのできるVR体験用のヘッドマウントディスプレイがリリースされます。
本格的にVRが普及し始めることになり、VR普及元年とされています。
一方で、VRの画像、画質について、高性能カメラで撮影したものはきれいだが、CG(コンピュータグラフィックス)等で作成しものについてはまだ、いまいちなのでは?と感じているかもしれませんね。
しかし、今後、期待できる予感がします。
以下の動画をご覧ください。
この子はTELYUKAさんにて製作されたCGです。
2016年に発表されたとたん、世界中で注目を浴びて話題となりました。
今回2018年版として発表され、さらに進化しています。
こうした映像技術の進歩を見るとVRへの活用も大いに期待されますね。
VRの世界市場は、2016年にVR業界全体での売上は29億ドル(約3190億円)とも言われていますが、今後、2020年には10倍以上になると言われています。
VRでのビジネス立上げにあたっては、VRコンテンツの開発に時間、コストがかかる等、大変な面もあります。
しかしながら、今から頑張って取り組み続ければ、業界での一定のポジションをとれる可能性があります。
VRコンテンツの製作、あるいはサービス提供が激化する前の今は、参入しやすい状況と言えるでしょう。
VRを活用して集客増につながる事例
ここでは、個人事業・ビジネスとしてのVR活用の観点で相性が良いと思われる案件をピックアックしてみました。
あなたのビジネスにおけるヒントになれば幸いです。
不動産
不動産業界においては、店舗やWebサイト上で物件を擬似内見できる「VR内見システム」が話題となっています。
現物の部屋を見る前に、パソコン、スマホや店舗で部屋のイメージを体感できるのがいいですね。
特に、引っ越しで遠方に移動する際には、現地に足を運ばずにWebサイト上で体感できるサービスがあると助かります。
また、リフォームでの活用例もあります。
特に3Dの施工図面を所有していれば、それをVRに取り込むことで比較的容易に活用できます。
リフォームをおこなう前に、改装後のよりリアルなイメージをお客様と共有することができるでしょう。
事例: 「MITEKURE(ミテクレ)」
中古物件のリフォーム前後の比較ができます。
ネイルアート
VRを活用してネイルデザインを実際に施す前にイメージを確認することができます。
サロン経営において、お客様と事前にイメージを共有するといった活用法が考えられます。
これまでは、ネイルを塗ってしまってから、思い描いていたイメージと違ってがっかりということも。
もう一度やり直すのも手間ですし、爪への負担も考えるとなかなか変えづらいものです。
そこで、事前にシミュレートできれば、シーンや服装に合わせたネイルを安心しておこなうことができるようになりそうです。
他にもジュエリーのオーダーメイドやヘアスタイルのシミュレーションなどにも応用できそうですね。
事例: バーチャルネイルアートシステム「NailCanvas VR」
ヘッドマウントディスプレイ「Oculus Rift」を装着し、センサーによって指先の動きを検出することで、あたかもユーザの爪のネイルデザインが変化するような疑似体験ができます。
http://https://youtu.be/RhHG_AdXybg
アウトドア、スポーツ
興味はあるけどまだ体験したことがないようなアクティビティ(アウトドア、スポーツなど)について、VRを活用すれば、クライアントに気軽に体験してもらうことができます。
例えば、ゴルフやスキューバダイビングなどについてVR用ヘッドマウントディスプレイを装着してもらい、疑似体験をしてもらうことで、実際にあなたのレッスン・教室への入会や商品販売などにつなげる、といったことが考えられます。
他にもロッククライミング、スカイダイビングなど様々な応用先が考えられます。
事例: ゴルフシミュレーター「The Golf Club VR」
高齢者向けサービス
高齢者向けの在宅サービスなどの介護・福祉の分野でもVRは活用されています。
何らかの理由で要介護となった高齢者向けに、旅行・ツアーの疑似体験サービスやリハビリも兼ねたエクササイズとしてのVRゲームの提供などがあります。
おもしろいところでは、「あなたの思い出、疑似体験できます」とのVRサービスを提供しているところもあります。
体が思うように動かず、懐かしの場所を訪れることもままならないといった高齢者を対象にご本人から希望を聞いて、それに基づいたVR動画を提供するというサービスです。
高齢者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)を改善する狙いがあります。
今後、さらに技術が進歩し、ご家族も一緒に同じ仮想空間に入り、同時体験が可能になるといいですね。
事例: 「おもいで眼鏡」
さらには、介護をする側(高齢者のご家族など)向けのVRサービスもあります。
介護を要する高齢者の方が日常、どのように世界が見えているのか、どう感じているのか?
相手の立場になって考えよう、と言われても実際のところはなかなか理解しづらいものがありますよね。
そこで、外から見ていては分からない感覚的なことについて、VRを活用して介護する側の方々に疑似体験してもらおうというサービスです。
事例: VR認知症体験(銀木犀)
この事例は、認知症の方の日常を体験してもらうプロジェクトの一環としてVRを活用されています。
認知症の方の行動は、理解しづらいと感じるかもしれません。
しかし、実は、その行動の背景には、脳の機能の低下等によるなんらかの原因によって、混乱したり、極度の不安に陥ったりすることがあると考えられています。
その混乱や不安な状況を実際に体験してもらうためのプログラムとなっています。
最後に、高齢者向けのVRサービスを提供する際の注意点を整理しておきます。
特に、リハビリを兼ねてのエクササイズ(ヘッドマウントディスプレイ装着)をおこなうときには配慮が必要です。
高齢者向けゲームを研究されているマイアミ大学 ボブ・デ・スカッター教授の助言を基に記載しました。
・視力や聴力の機能が落ちてきていることへの配慮
・VRのヘッドマウントを装着して動く際には、転倒防止など周囲への注意が必要。
ご家族や付添い人等がいる場で実施する。
・脳機能の低下が進行している場合、現実と仮想の区別がつかなくなることが指摘されていますので、長時間の使用を避ける、あるいは、医師に相談する。
・コンテンツの内容については、高齢者だからといって、幼稚でアニメっぽいものは避けるようにしましょう。
一般的な高齢者へのアンケートによると、イノベーティブ(先進的)で、考えさせられたり、意味のある会話を交わせるようなゲームが好まれるとのことです。
VRコンテンツ作成
昨今、VRコンテンツ制作に注目が集まっています。
サービス提供先の例
- 不動産業界
- 自動車業界
- 地方自治体(地元PR)
- ウェディング・式場
- 企業の社員教育・訓練
- 個人事業主:PB(プライベートブランド)でオリジナル作品の制作、販売
など
参入している事業者がまだまだ少ない今なら先行者利益を享受できるタイミングです。
下記のような、すでに先行している企業を調査・分析しながら、斬新なアイデアで世の中を変えられるようなコンテンツを創出できたら素晴らしいですね。
【主なVR映像制作会社】
① CINEMARAY(シネマレイ)
360度動画・VRの映像制作、CGデザイン、アプリ開発など
② Nest+ Visual(ネストビジュアル)
企画から撮影・編集・CG、アプリ開発も含めてワンストップで対応出来る360度VRにおける制作プロダクション。
③ PANOPLAZA(パノプラザ)
パノラマ写真・パノラマ動画やCGを利用したVRコンテンツの制作。
VRを活用したiOS/Androidアプリの開発から、OculusやGearVRなどのヘッドマウントディスプレイ対応のアプリ開発など。
【番外編】
magic leap(マジック リープ)
ヘッドマウントディスプレイ(HMD)方式の複合現実ウェアラブルコンピュータを開発するアメリカの企業。
“2010年に設立され、拡張現実(AR:Augmented Reality)や複合現実(MR:Mixed Reality)に対応したデバイスを開発する。2015年10月にGoogleなどから5.4億ドルの資金を調達しており、総額22億ドル(約2,600億円)以上の資金を調達している。投資家からの資金調達時に使用された映像は特撮だった事が明らかになった。“ (Wikipedia)
未だ限られた情報しかなく、インターネット上で話題となっている謎の企業ですが、今後の動向に要注目です。
ホームページ上の「Keep in touch」から登録すると最新情報が送信される仕組みです。
VR活用による集客のポイント
あなたの自社ビジネスにVRを活用するにあたっては、「VRの活用」という点をPRして集客につなげていくことがポイントです。
VRをビジネスに活用した事例はまだ少ないため、非常に注目されやすい状況であり、チャンスだと言えるでしょう。
あなたのホームページやブログ、メルマガ、FacebookなどのSNS、Twitter、LINE@などを使って情報発信していきます。
その際、あなたのビジネスモデルがBtoB(企業間取引)、BtoC(一般消費者との取引)によって発信の場を使い分けるとよいでしょう。
また、情報を発信することで結果的にVR活用に係る情報も集まってきます。
さらには、インターネット上(SNSなど)でのコミュニティへの参加、リアルな場としてのフォーラム、イベントへの参加によっても情報を収集するとともに自社の情報発信をおこなっていきます。
その中で自社の強み、コアコンピタンス(競合他社に真似できない核となる能力)についての認識、理解を深め、それを情報発信にフィードバックさせることで、さらなる見込み客を増やしていくとよいでしょう。
まとめ
以上、ビジネスでVR活用事例をご紹介しました。
ポイントを整理すると次の通りです。
・VRは単なる3次元表現のツールだけでなく、顧客との共有体験のためのコミュニケーションツールとしても有用。
・VR活用によって顧客の購買判断のための情報量が増える。購買意欲を高める。
・まだまだ目新しく、注目される。
・アイデア次第でおもしろいコンテンツが制作でき、顧客に喜んでもらえる。
・自社ビジネスへのVR活用については積極的に情報発信することが大切。
・あなた自身がVRコンテンツ制作を手がける場合は、本格参入時期を見極めること。
ビジネスへのVR活用は始まったばかりですので、自社ビジネスへの展開にあたっては、地道にコツコツ進めていくことが大切です。
VRの活用によってあなたのビジネスがさらに発展することを祈念しています。